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ファスト映画と著作権侵害

「ファスト映画で逮捕者!」
そんなニュースが話題になりました。

「ファスト映画」とは、映画を短く編集した動画で、予告編とは異なり、オープニングからエンディングまで含まれているものを指すことが一般的です。映画配給元などが制作していることはまれで、ほとんどは権利を持たない人が制作して、YouTubeなどの動画投稿サイトに公開されているのが実情です。

この「ファスト映画」を制作して、動画投稿サイトに公開して収益を上げていたところ、著作権侵害として逮捕されたというものです。

コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が発表した調査(6月中旬時点)によると、YouTubeに投稿されているファスト映画は2,100本以上、累計再生回数は約4億7700万回、累計被害額の試算は950億円とのこと。これが事実であれば、権利者にとってはかなりの経済的損失です。

こういったニュースを目にすると、「もしかすると自分も侵害しているのでは?」と心配になります。気をつけるポイントを見てみましょう。

まず、動画を制作する側です。
原則は、権利者に無断で動画を編集して世に出すことはできません。これは、お金を取っている、取っていないは関係ありません。

ただし、いくつかの例外があります。その代表格が、個人で楽しむために編集する場合です。ただ、せっかく作ったら他人に見せたくなるのが人情ですから難しいところです。少なくとも、動画サイトに公開することは「個人で楽しむため」とは言えないので注意が必要です。

では、動画を観る側はどうでしょう?
原則は、違法なコンテンツと知りながらダウンロードすると違法です。映画を観に行くと流れているアレですね。ただ、違法なコンテンツであってもストリーミング再生している分には罪に問われません。

この分かれ目は、ストリーミングかダウンロードかです。ストリーミングの場合、サイトを開いたら動画が再生されて目に入ってきてしまったといえますが、ダウンロードの場合は、自分の意思で動画を取得しています。

著作権侵害のラインはあいまいで、流動的ともいえます。とはいえ、「他人に見せる」、「ダウンロードする」といった分かりやすい基準もあります。

動画サイトにアップする時、ダウンロードボタンをクリックする時、大丈夫かな?と考えてひと呼吸おくだけでも安全・安心を守ることができるのではないでしょうか。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2021年7月号」から転載)