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五輪メダリストと商標

開催前からいろいろ議論があったオリンピックが閉幕しました。今は、パラリンピックの真最中です。そんな中、こんなニュースがありました。

「中国商標局 五輪選手氏名の商標先取りは禁止」

中国で、日本の特許庁にあたる国家知識産権局は、「企業が東京オリンピック参加選手の姓名やニックネームなどの名声を不正に利用するのは権利の侵害」として、これら行為に基づく商標登録申請を禁止する旨の発表をしました。

また、これにあわせて、既に中国で商標登録出願されたものの、却下処分とする109件を発表しています。

これらの発表は、東京オリンピック終了10日後の8月18日に行われており、中国当局の措置としては、内容、スピードともに異例と言えます。

「商標のパクリといえば中国」といった印象をお持ちの方も多いでしょう。数が多いことは事実ですが、近年、中国では違法な商標の取り締まりに非常に積極的です。前述のオリンピック選手の姓名への対応もその表れと言えるでしょう。

国際社会で影響力を強めつつある中国にとっては、国際的な知的財産権戦略はとても重要です。世界の特許出願数を見ると、2019年のデータで、中国は130万件で第1位、50万件で第2位の米国、45万件で第3位の日本に大きく水をあけてのトップです。こうした中で「商標パクリ大国」の汚名は国家として絶対返上が目下の目標です。

戦後日本が「安かろう、悪かろう」、「パクリ大国」だったことを記憶にとどめている人は、もはや少ないでしょう。私が小学生の頃、社会の教科書には「日本は、資源がないので、知恵(知的財産)で勝負」とありました。一方、中国は、人的資源も天然資源も豊富な国です。

知的財産重視の国家戦略は、これからの中国の国際的なポジションを予見しているとも言えるでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2021年8月号」から転載)