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いよいよ値上げ!?特許料

これまで、料金引き下げの方向で料金改定が進んできた特許関係費用ですが、いよいよ値上げに転じる予定です。

来年4月(令和4年4月1日)施行を目指して、パブリックコメントの募集が終わったところです。おそらく予定通りに進むものと見込まれます。

今回は、各種ある特許料金関係費用の内、「特許料」(いわゆる年金と呼ばれる費用)の値上げが予定されています。

特許庁のサイトをご覧になっていただければ分かりますが、値上率が最も高いのが、第1年から第3年までで、期間が先のものほど値上率が小さくなっていることが分かります。

これは、国の産業政策と環境の変化が原因です。高度経済成長期においては大企業が知的財産を支えてきました。発明を生み出し、特許権を取得し、それに基づく製品を生産し、世界に販売して席巻する。ところが、バブル崩壊、リーマンショック以降、大企業の知的財産に対する目がシビアなってきました。特許出願数も減少に転じました。

一方で、この頃から注目されてきたのが、技術力の高い中小企業やスタートアップです。今までは大企業の影に隠れていた中小企業などが表に出て、直接、世界市場とやりあう機会が増えてきました。そこで、特許庁は、これら中小企業やスタートアップを支援する戦略に出ました。それが、効果的な特許費用の軽減です。資金力が乏しいと考えられる中小企業支援策として、特許出願や審査請求の料金を値下げたり、減免策を打ち出しました。また、特許料について、初期の費用を割安に設定し直したのもこの時期です。

ところが、近年、いわゆるモノづくりからIT・サービスへ世の中を動かす技術が変遷してきました。特許権は最大20年の独占権ですが、ITの世界は技術進歩のスピードは速く、長年にわたって特許権を維持してビジネス基盤を盤石とする従来のモノづくり特許戦略ではなく、特許権を活用して短期間でマーケットを押さえるようなIT独自の特許戦略が増えてきました。これによって、特許料収入が激減する事態に陥ってしまったわけです。

特許をはじめとする知的財産政策は、国家の産業政策ですので、国の産業政策や取り巻く環境によって時代と共に変わっていきます。知的財産は、世の中を構成する重要な要素のひとつと言えるでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2021年8月号」から転載)