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#(ハッシュタグ)と商標権

「#(他社ブランド)のハッシュタグは商標権侵害」との判決がありました。
地方裁判所での判決ではありますが、画期的と言えるでしょう。

原告はアパレル商品などの製造・販売を手掛ける「Wisteria Kyoto」、一方、被告はハンドメイド商品をメルカリで販売をしている主婦です。

被告の主婦は、手作りの巾着バックをメルカリで販売する際に、原告が「シャルマントサック」とのブランドで展開している商品と似ていることから「#シャルマントサック」、「#シャルマントサック風」などのハッシュタグを添えていたとのこと。

被告側は、(1)「ハンドメイド品である」と記事に明記しているため誤解は生じない、(2)「#シャルマントサック」と「シャルマントサック」では表記がちがう、(3)趣味でバッグを製作し販売していたにすぎない、と主張しましたが、認められなかったようです。

これまでの裁判例からみても被告側の言い分はいずれも無理があると考えられ、この点の判断は従来と変わりません。むしろ、画期的と言えるのは、ハッシュタグを「商標の使用」と認めたことでしょう。

商標法では、そのような場合を「商標の使用」とするか厳密に定めています。商標権を侵害するとなれば罪に問われるわけですから厳密に定めておくことは大切です。巾着バックは「商品」に分類されますが、では、「商品」における「商標の使用」とはどのようなことでしょう。

まず、商品そのものや包装に商標(ロゴやマークなど)を付す行為です。ハッシュタグは「商品そのものや包装」ではないので、これには当たりません。

次に、商品や包装に商標を付したものを譲渡等する行為です。譲渡等にはインターネットで販売することも含まれます。メルカリは「インターネットで販売」といえます。しかし、メルカリで販売した商品や包装に「シャルマントサック」と書かれていたわけではありません。

最後に、商品の広告等に商標を付して頒布等する行為があります。このカテゴリーには、商品の広告等の情報に商標を付してインターネットを通じて提供する行為が含まれます。今回は、ハッシュタグが、この「商品の広告等の情報に商標を付して」にあたると判断したものでしょう。

もともとこの規定は、インターネットで通販サイトを立ち上げた際に、そのページに他人の登録商標と紛らわしい商標を付すといった状況を想定したもので、当時はハッシュタグが問題になるとは思いもよらなかったと思います。

法律やその適用は、時代によって変わっていきます。特に、IT・通信の世界では、これからもどんどん変化していくことが予想されます。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2021年10月号」から転載)