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「秘密意匠制度」をご存知ですか?

工業デザインを権利化する日本の意匠登録制度には「秘密意匠制度」があります。ご存知でしたか?

秘密意匠制度とは「意匠登録されてから一定期間(最大3年間)登録された意匠を公開しない」との制度です。

秘密意匠制度は、特許と異なり、経済安全保障といったテーマは関係ありません。企業を中心とする権利者の利益保護が目的です。秘密特許制度は、秘密にするかどうかは国家が決めますが、秘密意匠制度は、権利者が秘密にしてほしいと請求します。

秘密意匠制度は、デザイン競争が激しい業界で頻繁に使われる制度です。例えば、自動車業界などです。新しく開発した自動車のテスト走行は、秘密裏に行われるといった話を耳にしたことがあるかもしれません。モデルチェンジによって売れる、売れないが決まる自動車業界においてはデザインは重要です。一方で、競合他社にデザインを真似されないためには意匠登録によってデザインの独占権を押さえておくことも必須です。しかし、特許と同様、意匠登録制度の趣旨は「一定期間のデザインの独占を認める代わりに、広く公開して産業の発展に役立てる」ことですので公開が原則です。しかも、発明と違い、デザインは見た目ですから公開されたらすぐに真似されてしまいます。そこで、導入されているのが秘密意匠制度です。

秘密意匠は、公開されていないにもかかわらず、他人のよく似たデザインに対して警告のうえ権利侵害を主張できるといった強力な権利です。

同じ「秘密」であっても、特許制度と意匠登録制度では、随分違うところが興味深いですね。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2021年12月号」から転載)