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海賊版対策ポータルサイト

 マンガ海賊版サイトを集めたポータルサイト「漫画村」の摘発、ファスト映画サイトへの映画会社からの損害賠償請求など、このところインターネットでの違法動画サイトを巡る事件が世間を賑わせています。

そこまでの大きな事件になっていなくとも、イラストや写真を勝手に使われた、文章をコピペしてあたかも自分書いたかのように他人がサイトにあげている、など、個人レベルでの困りごとは、インターネットの世界では、もはや日常茶飯事と言えるでしょう。

このような問題を解決すべく、今月、文化庁は「海賊版対策ポータルサイト」を立ち上げました。

官公庁が立ち上げるサイトは、正直、使い勝手が悪いものが多いのも事実です。しかし、このポータルサイトは、なかなか役に立ちそうです。

例えば、「著作権とは?」「海賊版とは?」といった解説は最小限に留めて、自分の作品がインターネットで無断使用されているのを発見した際の具体的な対応の説明に重点を置いています。

ひとつ目が「初めての『削除要請』ガイドブック」です。

自分の作品がインターネットで無断使用されている場合、プロバイダーやサービス事業者に「削除要請」すれば削除してくれると多くの方は理解しています。しかし、実際にどのような手順で行えばよいかまで分かっている人は少ないでしょう。

このガイドブックでは、削除要請を行うための流れを説明するとともに、削除要請のメール文例(日本語と英語)まで掲載されており実践的です。

ふたつ目が「著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック」です。

こちらは「海賊版対策専門家等の有識者よりヒアリングしたノウハウ・知識を集約」と謳っている通り、前者のガイドブックと比べるとノウハウ・知識集であって、対策を行う際の参考として辞書的に利用することになると思います。

特徴的なのは、全体を概説する「総論」の他に、「米国編」、「中国編」、「ベトナム編」、「ロシア編」と海賊版で問題となりがちな国ごとに分冊化している点です。著作権は世界中で守られるとはいうものの、細かいところで各国の法制や事情も異なります。その点、画期的な取組みと思われます。

自分が心を込めた作品が無断で使用されているのを見つけると悲しい気持ちになります。そんなことが起きないことを願うとともに、このような情報がまとまったポータルサイトがあることを頭の片隅に置いておくだけでも安心でしょう。

 

 (メルマガ「IPビジネスだより 2022年6月号」から転載)