· 

エルメスのリメーク

 インターネットを誰もが空気のように使う時代です。メルカリなどネットで誰もが簡単に売り買いができるようになりました。しかし、まだまだ知財についてのリテラシーが追いついていかないのが実情のようです。

そのことを象徴するような事件がありました。
「エルメス」リメークのヘアゴム販売は違法 「かわいい」SNSで横行

エルメスで商品を買った際に包装に使われるリボンを、ヘアクリップやくるみボタンにリメークすることが流行しているようです。ところが、これらを商品としてネットで販売していた人が商標法違反で逮捕されたとの事件です。

さて、上述の記事にある容疑者のコメントですが、極めてよく見られるものです。

「他の人もやっているので違法行為との認識はなかった」
「リメーク品が違反になるとは知らなかった」

知的財産権は極めて強力な権利(独占排他権)です。そのため、行為者が違法と認識していたかどうかは問題になりません。たとえ知らなくても権利侵害に問われます。しかも、警告を受けていたのであれば認識はなかったとの言い訳は通じません。

また、「リメーク品が商標法違反」だったのではありません。リメーク品を自分が楽しむために個人的に使っていたのであれば問題はありません。この事件では、ネットで「販売」している商品に「商標(HERMES)」と付されていることが商標法違反です。

近年、ブランド意識が高い企業(特に、欧米のファッションブランドや、ディズニーなどのコンテンツビジネス)は、インターネットでの自社ブランドの無断使用に厳しくなっています。今回のように、厳格な措置を当局に求めることも目立ってきました。

エルメスから損害賠償を受けたらと考えるだけでもぞっとします。しかも、逮捕ですので有罪が確定すると前科がついてしまいます。

ひと昔前であれば、エルメスのリボンをリメークしたヘアゴムを作って学校や職場で友達にあげていた程度だったかもしれません。インターネットが普及した現在、同じ感覚のままネットで商品販売を行うと世界中を相手にしたビジネスになってしまいます。この違いを意識することが現代のリテラシーとして求められているでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2022年7月号」から転載)