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クラウドファンディングにご注意を

昨今、クラウドファンディングを活用して新しいビジネスを立ち上げるのは当たり前のアプローチになってきました。最近でも、法隆寺が寄付集めに利用したことがニュースになって身近に感じた方もおみえでしょう。

ところが、せっかくのクラウドファンディング活用も、知財の視点でも気をつけないと問題を引き起こすこともあるようです。

こんな報道がありました。
「絶対に購入しないようお願いします」未発売のからくり看板、写真を無断転載した偽広告が出回る 作者が注意喚起

ハンドルを回すと“open”と“closed”の文字が入れ替わる“からくり看板”を考えた方がクラウドファンディングを活用して商品化しようとしたところ、それを見た悪意の第三者が作者より先に偽物をつくってAmazonなどでネット販売を始めてしまったという事件です。

上述のサイトに動画も上がっていますのでご覧になっていただくと、なかなかセンスの良い商品であることが分かります。しかし、記事にあるように、粗悪品も多いらしく、せっかくの良いアイディアが残念なことになってしまっています。

記事には、「写真や動画の無断使用は明確な著作権侵害となるため、それに関して弁護士と相談していきたい」とありますが、確かにそれでAmazonなどに流れる無断使用の写真や動画は削除できるでしょう。しかし、残念ながらそれだけでは肝心の商品自体のデザインは守れません。

上述のサイトの動画で見られるようなデザインや動きに特徴がある商品こそ、本来は、意匠登録をして強力な権利(意匠権)での保護を目指すべきだったでしょう。

意匠権とは、製品デザインを保護する権利で、特許権と同じく独占権です。他人の無断実施を差止めることができますし、損害賠償も請求できます。

一方、注意すべき点もあります。特許権と同じく意匠権も、「新規な」デザインにのみ認められますので、世の中に発表する前に出願する必要があります。つまり、クラウドファンディングで資金調達を開始する前に出願することが原則です。

この作者も、クラウドファンディングの開始前に意匠出願も検討したようですが、費用面から見送ったとのこと。費用対効果の判断はなかなか難しいところではありますが、外見に特徴がある商品をネット販売する際には、模倣品は現れるとの前提でビジネスをプランすることをお勧めします。

 

 (メルマガ「IPビジネスだより 2022年7月号」から転載)