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いきなり!ステーキと資金調達

格安ステーキで一世を風靡した「いきなり!ステーキ」ですが、昨今の業績不振で創業社長が辞任するなど暗雲が立ち込めています。

そんな中、「『いきなり!ステーキ』商標権が債務の“担保”に入っていた」といった記事がYAHOO!ニュース(2022.8.13)に掲載されました。これは、今年2月の週刊文集の記事の再掲です。

「いきなり!ステーキ」という著名な商標まで担保にしなければならないほど窮していると週刊文春は煽りたかったのかもしれません。

しかし、商標権をはじめとする知的財産権は、「財産権」と呼ばれるように目に見えない財産として企業活動に現れてくることは珍しくはありません。

商標権は、いわゆる「のれん代」として著名であればあるほど価値があります。多くの場合、会社や店舗の経営を誰がやっているかなどお客様は興味がありません。お客様がブランドで商品やサービスを選ぶのであれば、ブランドそのものが価値を産みます。

「いきなり!ステーキ」のような著名ブランドが資金調達の場面で活用されることは、その意味では、当然と言えるでしょう。

同じく知的財産である特許なども資金調達で大きな役割を果たす場合があります。例えば、最近注目されたのが、次の日本経済新聞の記事(2021.9.9)です。
「スパイバー、新興勢最大の340億円調達」

スパイバーは、新素材である人工的に作ったクモの糸を中核技術とするスタートアップです。昨年、事業価値証券化といった手法を用いて資金調達を行いました。この聞きなれない事業価値証券化という資金調達方法は、スパイバーの持つ特許を裏付けにしています。

もちろん知的財産を使えば、いつでも、だれでも、お金を出してくれるわけではありません。「いきなり!ステーキ」のような誰もが欲しがる著名な商標、「人工クモ糸」のような将来性が見込める特許でなければ資金調達に役立てることができないのも事実です。

ただ、知的財産には、その名の通り「財産」としての側面があることを念頭に置いておくとよいでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2022年8月号」から転載)