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「ビジネス・コート」東京にオープン

今月、東京 中目黒に「ビジネス・コート」がオープンしました。「ビジネス・コート」とは、企業同士の争いなどのビジネスを巡る訴訟を専門的に扱う裁判所です。

特許や商標に関する訴訟を受け持つ知財高裁や東京地裁の知的財産権部の他にも、東京地裁の商事部、倒産部といったビジネスに関連する部門が移転しました。このニュースをご覧になって、知財事件専門の裁判所があることに驚かれた方もいるかもしれません。

あまり知られていないですが、特許をはじめとする知的財産権に関する争いは極めて専門性が高いため、裁判において通常とは異なったルートをとります。

特許権の侵害事件などは、第一審は地方裁判所で扱われます。ただし、前述の通り専門性が高いため専属管轄が定められており、例えば、東日本での事件については東京地裁の知的財産権部が専属で管轄します。

また、権利の有効性の争いは、地方裁判所ではなく、特許庁で審判事件として扱われます。技術的な見地から特許権の有効性を判断するとなると専門的な知識が必要となるためです。

地裁での第一審、特許庁での審判、いずれの場合も不服がある場合は高等裁判所に上訴できますが、この際の専属管轄が前述の知財事件を専門的に扱う裁判所「知財高裁」です。特許に限らず知的財産権全般を扱います。例えば、著作権の事件である「音楽教室 vs JASRAC」の訴訟も知財高裁で扱われています。

そして、さらに不服がある場合に、最高裁に上告といった流れになります。知的財産権の特殊性や専門性を考えると知財高裁の判決を最高裁で覆すことはなかなかハードルが高いです。「音楽教室 vs JASRAC」事件の最高裁判決も、基本的に知財高裁の判断をなぞった判決といえるでしょう。

裁判所に知的財産事件の専門部局があるように、法律の専門家である弁護士とは別に弁理士が存在する意義がここにあります。これもまた、あまり知られていないですが、弁理士は知的財産権に関連する訴訟において弁護士と共に裁判に関与することができます。

是非、知的財産の専門家である弁理士を有効にご活用ください。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2022年10月号」から転載)