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「開放特許」に活路

クリスマスイブのNHKニュースで「“開放特許”に活路」といった報道がありました。(NHK サタデーウォッチ9 2022.12.24)

大手企業が取得したものの、使われずに眠っている特許(休眠特許)を、中小企業やスタートアップに有償で開放(開放特許)する動きが活発化しているといったニュースです。

番組では、キューピー株式会社の保有する「歯ごたえを失わないで食材を柔らかく加工する発明」の特許を活用した高齢者向け食事宅配企業の事例や、開放特許のマッチングを進める九州の信用金庫の活動などが紹介されていました。

特許技術を有償で提供する、いわゆるライセンスビジネスは、以前から行われていました。また、少し前には、大手企業の休眠特許を中小企業などに提供していく動きが注目されたこともあります。

これらと昨今の開放特許の動きの違いは、大手企業の見せ方の違いといえます。

特許は、保有するだけでも毎年お金がかかります。使う予定の無い特許を何百、何千と抱えている大企業にとっては、それだけでも高額なコストがかかります。これらのコスト削減を図りつつ、日本経済のために特許を開放しているといった企業のイメージ戦略が前面に出てきている点が変わってきています。大企業としてはSDGsに取り組む狙いと近いものがあるでしょう。

一方、大企業の狙いはどうであれ、中小企業やスタートアップにとっては、研究開発費をかけずに新しいアイディアや技術を取り入れることができるチャンスです。これを国も支援しています。例えば、開放特許をキーワードで検索できるデータベースも公開されています。

また、大企業も活動を活発化しています。例えば、次のような報道もありました。
「パナソニックHD、知財情報の検索システムを外部に公開」(日本経済新聞 2022.12.14)

これまでと比べて、大企業の持つ特許を活用するハードルが下がってきているといえます。新しい技術開発と並行して、外部からの技術の導入も選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。

冒頭のNHKのニュース番組は、年内は無料で観ることができるようです。ご興味を抱かれた方は、是非、ご覧になってみてください。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2022年12月号」から転載)