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「事業再構築補助金」は、どう変わる?

新型コロナによる経済活動への影響が長期化する中、事業構造を見直すことで難局を乗り切ろうとする中小企業を支援する趣旨で始まった事業再構築補助金、この1月16日には第9回公募が始まりました。公募の締め切りは3月24日です。

事業再構築補助金は、次年度も継続される見込みで、昨年末に成立した令和4年度第2次補正予算案に盛り込まれました。

令和4年度第2次補正予算案では、事業再構築補助金の事業目的に、従来の新型コロナ対策に加えて、「物価高騰等」の影響への支援、「中小企業の付加価値額向上や賃上げ」といった文言が新たに入ってきました。

つまり、次回、第10回事業再構築補助金からは、守りから攻めへとフェーズが変わったと言ってよいでしょう。これに伴って、類型や要件なども変わっています。具体的に注目すべき変更点を見ていきましょう。

まず、類型です。「枠」と呼ばれているもので、今月の第9回公募までは、「通常枠」、「大規模賃金引上枠」、「回復・再生応援枠」、「最低賃金枠」、「グリーン成長枠」、「緊急対策枠」の6つの「枠」が設定されていました。

次回の第10回公募からは、「物価高騰対策・回復再生応援枠」、「成長枠」、「グリーン成長枠」、「産業構造転換枠」、「サプライチェーン強靭化枠」、「最低賃金枠」の6つの「枠」に組み替えられます。

それぞれの「枠」については、事業再構築補助金のサイトに詳細な説明があるのでご覧いただくとして、主な変更点を知ることで大きくフェーズが変わったことを確かめてみましょう。

まず、「回復・再生応援枠」と「緊急対策枠」が再編されて「物価高騰対策・回復再生応援枠」となりました。新型コロナによる売上減少などへの緊急対策から昨今の世界情勢による物価高騰に事業再構築のテーマが移ってきたことが見て取れます。

同様に、昨今の世界情勢や円安を契機として、生産拠点を海外から国内に移し、国内でのサプライチェーン再構築を支援するのが「サプライチェーン強靭化枠」です。

また、従来の「通常枠」は、「成長枠」と再編されました。象徴的なのは、「通常枠」で求められた売上高減少要件が撤廃されました。一方、「成長枠」では、市場規模の拡大が見込める業種・業態への転換が求められます。

新設の「産業構造転換枠」も、市場規模が縮小などの構造的課題を持つ業種・業態から、市場が見込める新たな業種・業態への転換を求めています。

いかがでしょう。「新型コロナの影響で売上が落ちて困った」といった中小企業を支援するこれまでの守りスタイルから、「事業再構築によって売上拡大を目指す」中小企業を支援する攻めのスタイルに変わってきているのが分かると思います。

新型コロナの影響を受けながらも独自の工夫で売上を伸ばしてきた中小企業も多数あります。次年度からの「事業再構築補助金」は、このような企業のチャレンジを視野に入れた建付けになったといえるでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2023年1月号」から転載)