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ルブタン「レッドソール」で色彩商標認められず

「『ルブタン』の“赤”、知財高裁も請求棄却」との記事がありました。(出典:WWD JAPAN 2023.2.27

クリスチャン・ルブタンの「レッドソール」といえば、女性ヒールシューズの赤い靴底として有名です。ルブタンは、この「レッドソール」を世界中で商標登録すべく働きかけています。

日本でも、色彩商標(色のみの商標)として登録を目指してきたわけですが、特許庁で登録は難しいと拒絶され、今回、知的財産事件を専門に扱う知財高裁でも請求が棄却されたというわけです。

もちろん最高裁まで争うことは可能ですが、知的財産事件についての知財高裁の判断を覆すことは、現実的には難しいでしょう。

色彩商標制度は、「色のみ」の商標登録を認める制度です。文字でもロゴでもなく「色のみ」ですから極めて厳しい審査になります。日本中のほとんどの人が「この色を見たらアレ」と思うくらいでなければなりません。商標登録が認められると「その色」を独占できてしまうからです。

色彩商標は、日本では、現時点で9件しか登録が認められていません。例えば、MONO消しゴムの青、白、黒の組み合わせ、セブンイレブンの赤、緑、黄、白の組み合わせなどです。確かに、これらは、日本人であれば、だれもが思い浮かべるといっても良いでしょう。

「色のみ」といっても、色の配列や商品・サービスは細かく限定されます。例えば、MONOでいえば、商品は「消しゴム」に限られ、上から順に、青、白、黒を3等分の配色とされています。

さて、ルブタンも「靴底」について「赤」なわけですが、これが商標権として成立すると他の靴メーカーは赤い靴底のヒール靴を作れなくなってしまいます。それでも構わないくらいルブタンが日本で有名か?ということになるのですが、裁判では、50%程度の人が知っていると認定したうえで、それでは独占を認めるほど日本において著名であるとはいえないと判断しました。

実は、ルブタンの赤、色彩商標制度が日本で導入された際に、制度説明の例としてよく使われていました。しかし、制度が開始されてみると、現実にはずっと判断が厳しかったということのようです。

商標には、色彩や音などの特殊な商標があります。これらは文字やロゴマークなどの商標に比べると格段に登録が難しくなっています。出願を検討するにあたっては、専門家と十分相談されることをお勧めします。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2023年3月号」から転載)