· 

改正法の方向性:商標登録が認められやすくなる?

2023年3月10日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、通常国会に提出されました。「不正競争防止法“等”」には商標法、意匠法、特許法も含まれた知的財産関連の法律を一括して改正する法律案になっています。

この法律案は、国会審議中ですので、まだ確定はしていませんが、方針が大きく変わることはないと思われます。そこで、先取りして法律案から知的財産制度に関連するトピックをふたつ見ていきましょう。

まず、ひとつ目は、商標法の改正案です。ここでは「登録可能な商標の拡充」とうたわれています。具体的には、次のふたつの項目が取り上げられています。

a)先行商標権者の同意があり、出所混同のおそれがない場合には、登録可能とする。
b)氏名を含む商標も、一定の場合には、他人の承諾なく登録可能とする。

a)は「コンセント制度」と呼ばれ、すでに導入している国がいくつもある制度です。

商標制度では、原則、他人が既に登録している商標と類似している商標は登録されません。しかし、類似(似ているかどうか)の判断は非常に難しいものがあります。また、類似していたとしても一方が有名などの理由によって消費者が間違えるようなことはあり得ないといった場合も考えられます。

このような場合に、先行する商標権の権利者が同意すれば、類似していても登録を認めるといった制度です。

確かに、商標登録の可能性は広がりますが、「出所混同のおそれがない」を特許庁がどのように判断するのかが気になるところです。

b)は、IPビジネスだよりでも取り上げた「有名デザイナーの氏名がブランドとして商標登録が認められない」事例が頻発した問題に対応するものです。

現行の商標法では、氏名を商標登録するためには同姓同名のすべての他人の承諾を取らなければならないといった規定となっています。しかし、現実的には、はぼ不可能です。

これを緩和する法改正案ですが、これについても「一定の場合には」がどのように運用されるかがポイントになりそうです。

a),b)いずれも商標登録の可能性は広がることは間違いありません。それ自体は良いことですが、法律改正が決定してから「出所混同のおそれがない」「一定の場合には」についてどのような運用になっていくのか注目です。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2023年4月号」から転載)