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AIと著作権法(生成段階)

生成AIの学習段階における著作権について眺めてきました。では、次に、生成段階での著作権の扱いはどのようになっているでしょう。

生成段階での著作権の考え方は、AIであっても、従来からの絵画・音楽・文学などと同様の判断となります。

キーワードは、「類似」と「依拠」です。「類似」は、似ているか、似ていないかです。ここにもいろいろ判断基準がありますが、今回は割愛して、「依拠」について見ていきましょう。

「依拠」とは、「創作にあたって他の創作物をよりどころとしているかどうか」です。著作権法においては、2つの作品がそっくり(類似)であったとしても、各々が互いに影響を受けることなく別々に創作された(互いに依拠していない)のであれば、著作権を侵害したとはいえません。

この考え方は、生成AIでの著作権の扱いでも踏襲されています。しかし、難しいのは、AIがコンピュータプログラムであることです。人であれば、どこかで目にした作品にインスパイアされて創作といったことがあるかもしれません。しかし、生成AIには感情がありません。大量のデータから学習して生成した作品が、大量の学習データに含まれたたったひとつの作品に似ていた場合、これを依拠しているといえるでしょうか?

これが、AIの生成段階における最大の課題です。この課題についても、現時点では明確な答えは出ていません。

例えば、専ら特定の画家の絵画ばかりを学習させたAIが生成した絵画については、その画家の作品に依拠しているといえるであろうことは想像がつきます。では、何百万もの学習データがある場合、どのような条件で依拠といえるのでしょうか?数でしょうか?もし数であれば、いくつ以上でしょうか?

生成AIが日常でも使われるようになった今、前述のように、学習段階、生成段階のそれぞれで課題が顕在化してきました。

今月、政府が発表した「知的財産推進計画」では、生成AIを取り上げて検討することを宣言しました。AI技術の進歩は著しく、早期の課題解決が求められるところです。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2023年6月号」から転載)