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イノベーションボックス税制で日本復活なるか!?

「イノベーションボックス税制」をご存知ですか?

「パテントボックス税制」とも呼ばれるこの制度は、特許などの知的財産権を産み出した企業に対して税率を優遇する租税優遇制度です。ヨーロッパを中心に始まった制度で、最近では、多くの国が導入、もしくは、導入を検討しています。

日本でも、首相が掲げる「新しい資本主義」の看板施策として創設の検討が始まったとの記事がありました。(出典:朝日新聞デジタル 2023.7.3

記事によると「対象とする知的財産は『特許権』『著作権で保護されたソフトウェア』などで、『国内で自ら』研究開発をすることが条件」とされる模様とのこと。

目的は、日本の産業発展や競争力強化ですから、「国内」で研究開発してもらわなければいけませんし、「自ら」の研究開発(他国の成果を買ってくるなどはダメ)でなければ成果につながらないということでしょう。

一方で、日本企業だけを優遇する措置でないことも分かります。外国資本の企業が、日本「国内」に研究開発施設をつくり、社員を雇用するなどして「自ら」研究開発を行えば優遇されるわけです。海外資本を呼び込むための施策でもあるわけです。

「イノベーションボックス税制」は、一般的には、「国内で自ら」研究開発して権利化した知的財産を利用する製品やサービスの売上にかかる税が軽減されます。日本も同様の制度に落ち着きそうです。

この場合、製品やサービスに特許技術が必須となる製薬、自動車、半導体などの分野に有利に働きます。このため、新しいイノベーションの基礎をつくるスタートアップの育成に有効に働くかといえば必ずしもそうとはいえません。

「イノベーションボックス税制」の導入には、大企業の利益のみでなく、いかにスタートアップに魅力的な制度に仕上げるかに各国も苦心しています。

日本版「イノベーションボックス税制」がどのような仕上がりを見せるか目が離せません。

(メルマガ「IPビジネスだより 2023年7月号」から転載)