· 

Apple Watchの販売停止と特許権

今年のクリスマスシーズン、Apple Watchの2機種が米国で販売できなくなったとのニュースが駆け巡りました。(出典:CNET Japan 2023.12.22

テレビや新聞をはじめ多くのメディアで報道されたので、目にした方も多いでしょう。米国では一大イベントであるクリスマス商戦にApple Watch(2機種)を投入できなかったことは、Appleにとって経済的インパクトが大きかったと思います。

直接的な原因は「血中酸素濃度測定システムに関するMasimoの特許をAppleが侵害している」とした裁判所の判決を受けたものです。

IPビジネスだよりで何度もお伝えしているように、特許権は侵害品の流通を差し止めることができる強力な権利です。今回、Masimoは、この権利を行使してApple Watch(2機種)の流通をこのタイミングで差し止めたわけです。

定かではありませんが、報道によれば裁判所の判断に対して大統領の裁定を求めるか?といった話も出ているようです。一方で、Masimo側からは、そもそもAppleが共同研究をにおわせながら、裏で研究者を引き抜いて独自開発に舵を切るなどしていたから訴訟に踏み切ったといった声も聞こえてきます。

健康志向も高まる中、今ではApple Watchをはじめとするデバイスに血中酸素濃度測定などの健康測定機能が搭載されていることは当たり前になってきています。Apple Watchにこの機能が搭載できないとなると大問題になるでしょう。

「窮鼠、猫を噛む」ではないですが、よくできた特許権は、しばしば大きな相手にインパクトを与えることがあります。

特許権を有効活用するためには、発明について権利を取得する側は、練られた権利を作り上げることを目指すことが大切です。一方、権利に基づく攻撃に対抗するためには、商品やサービスを提供する際には、競合他社や関連技術を持つ企業の特許調査も重要となります。

あとから痛い目を見ないためにも、ビジネスの初めの段階で気をつけることが肝要です。

(メルマガ「IPビジネスだより 2023年12月号」から転載)