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ミッキーマウスの著作権が切れた!

初代「ミッキーマウス」登場アニメが著作権切れ、米国では二次創作可能に。そんなニュースが世間を賑わしています。(出典:読売新聞オンライン 2024.1.28

「米国では、ミッキーマウスを主人公にしたホラー映画の制作が始まった」といったニュースで触れた方も多いかもしれません。映画の予告動画をYouYubeで観たという方もおいででしょう。

さて、ディズニーが著作権にセンシティブなことは有名です。ミッキーマウスの著作権が切れそうになるたびに米国では著作権法が改正されて権利期間が延長されたことから著作権法を「ミッキーマウス保護法」と揶揄する向きもあるほどです。

そのミッキーマウスも、いよいよ初代「ミッキーマウス」登場アニメ「蒸気船ウィリー」の著作権が米国では切れることになったというわけです。

「蒸気船ウィリー」は1928年の公開です。米国の著作権法では、映画は公開から95年で著作権が切れますので、昨年2023年末で権利消滅しました。

ただ、すべてのミッキーマウスのデザインを自由に使えるようになったわけではありません。ここは注意が必要です。前述記事でも「初代『ミッキーマウス』登場アニメ」とあるように、あくまでも「蒸気船ウィリー」についてです。また、米国に限った話です。

まず、著作権は、作品ごとに発生します。つまり、著作権が切れたと話題になっているのは「蒸気船ウィリー」についてであって、その後につくられた他の作品の著作権は継続しているということです。後続作品についても時間の経過とともに順々に権利が消滅していきますが、現時点で、ミッキーマウスのコピーが、やりたい放題とは簡単にはいきません。

また、著作権は、国ごとに発生します。上述の記事でも「日本でははっきりせず」といった記載がある通り、米国で権利が切れたからといって、日本でも権利消滅とはいきません。

ところで、上述の記事の「日本でははっきりせず」とは、どのようなことでしょう?

その理由はいくつかあるのですが、第一に、著作物の種類によって権利期間が変わるためです。例えば、日本では、絵画などの芸術品と映画では権利期間の計算方法が異なります。つまり、「蒸気船ウィリー」を、芸術品とみるか、映画とみるかといった議論があるのです。

更に大きな要因が「権利期間の戦時加算」です。あまり聞きなれない言葉かもしれません。簡単に言うと「日本は先の戦争に負けたのだから、戦勝国の著作物の著作権保護期間については約10年(開戦から終戦までの期間)延長する」といった取り決めです。これは現在も認められています。

このように世界的に影響が大きな著作権の扱いについては、なかなか一筋縄ではいかないものです。


(メルマガ「IPビジネスだより 2024年1月号」から転載)