· 

いよいよ開始!特許出願非公開制度

今年の春は、知的財産関連で大きな動きがいくつもあります。

まず、5月から運用が開始される「特許出願非公開制度」です。

ひとことで説明するならば、「国家の安全保障上で問題となる特許出願は非公開とする」といった制度です。「公開されずに秘密にできるならば、むしろ嬉しいのでは?」といった声も聞こえてきそうですが、事はそんなに簡単ではありません。

この制度を開始するにあたって「特定技術分野」といった分野が定められました。「特定技術分野」とは、我が国の安全保障の在り方に多大な影響を与え得る先端技術が含まれ得る分野と、国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術が含まれ得る分野と定義されています。

それぞれの分野に属する技術の例として、前者であれば「発射体・飛翔体の弾道に関する技術」や「固体燃料ロケットエンジンに関する技術」などが、後者であれば「使用済み核燃料の分解・再処理等に関する技術」や「ガス、粉末等を散布する弾薬等に関する技術」などが挙げられています。

では、発明が「特定技術分野」に属した場合どうなるのでしょう。

まず、外国への特許出願が禁止されます。これに気づかず外国に出願してしまうと、日本で特許出願していたとしても却下されてしまうばかりか、1年以下の懲役、50万円以下の罰金またはその併科という刑事罰を受けることになるかもしれません。

これは慎重に考えなくてはなりません。そこで、怪しいと思ったら、まずは日本だけに特許出願しておくのが安全といったことになるでしょう。

さて、日本だけに特許出願したところ、その技術が「特定技術分野」に属すると判定されると、外国に特許出願できなくなるとともに非公開となります。国家機密というわけです。

「特定技術分野」に属するかどうかの判断は、特許庁ではなく、内閣府が行います。特許庁の審査官や我々弁理士の手の届かないところで判断されます。

現実的には、国家の安全保障にかかわるような発明は一部の企業に限られるとは思いますが、軍事転用可能な技術の場合、民生用の技術であっても「特定技術分野」に該当してしまうことがあるかもしれません。

これから特許出願を考える際に頭の片隅においていただくとよいでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2024年3月号」から転載)