· 

仮想空間での知財保護が強化

この春からの知的財産関連の大きな動き、メタバースでの権利保護強化です。具体的には、不正競争防止法の改正によるものです。

不正競争防止法では、これまでも形態模倣商品(いわゆるデッドコピー)の提供を禁じて取り締まってきました。見た目がそっくりで真正品と区別がつかない商品が外国から輸入されそうになって税関で差し押さえられたといったニュースを目にしたことがあるのではないでしょうか。

このように、粗悪品輸入の水際対策等として効果を発揮してきた不正競争防止法ですが、一方で、昨今の状況に対応できていないとの指摘がありました。それが、仮想空間での商取引です。

不正競争防止法で取り締まりの対象となる形態模倣商品とは「形をもった物」である必要がありました。つまり、現実に存在する物体でなければならなかったわけです。

メタバースといった仮想空間における商品には実態がないため、そのままでは法律を適用することができませんでした。

そこで仮想空間で商取引される商品についても形態模倣を取り締まりの対象とできるように不正競争防止法が改正され、この4月からいよいよ運用が始まることとなりました。

具体例を挙げると、仮想空間でアバターの衣装データを販売していた場合、そのデザインをそっくり模倣した衣装データを権利のない他人が販売すると不正競争防止法に違反したことになります。

また、仮想世界と現実世界の相互でも権利が及ぶことになります。例えば、前述の仮想空間で販売しているアバターの衣装とそっくりな衣装を、権利のない他人が現実世界で実際に商品化して販売するなども禁止されます。

仮想空間での知財保護は強く求められてきたものです。実際にどのように規制がされていくのかはこれから様子見のところがありますが、これまでいろいろ苦々しい思いをしてきたデザイナーの方々などにとっては朗報でしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2024年3月号」から転載)