· 

株式と交換で知的財産を手に入れる!?

お盆休みに日経新聞を眺めていると一面にこんな記事がありました。
「スタートアップ知財活用、自社株と交換しやすく 法務省」
(出典:日本経済新聞 2024.8.13)

丁度、お盆休み真最中だったこともあってか、さほど業界でも話題になりませんでした。しかし、なかなかインパクトのある記事ですので眺めてみましょう。

スタートアップが大学や大手企業から特許技術を入手してビジネスを始めることがあります。大学発スタートアップや企業の休眠特許の活用などがこれらにあたるでしょう。

この際、大学や大手企業にスタートアップがお金を払って特許を取得することが一般的です。しかし、潤沢に資金がないため、自社株を譲渡することで特許と交換することをスタートアップが考えたとします。ところが、記事にあるように、現在は裁判所に申し立てて、選任された検査役の検査のうえでなければ認められません。

この手続きを簡素化して、スタートアップがビジネスを立ち上げるハードルを下げようという動きが始まるというのがこの記事です。

実は、この手続き、特許権など知的財産権に限ったものではありません。例えば、土地などの不動産を自社株と交換することもできますが、上述の特許と同様の手続きを踏むことが定められています。むしろ、この手続きは、不動産の扱いなどを厳密にするために裁判所による判断を求めている面があります。

記事のタイトルに法務省とあって、経済産業省や特許庁でないのは、この扱いが会社法で定められているからです。つまり、知的財産のみの枠組みではないためです。

今回、近年のスタートアップ支援の政策の一環として、知的財産に着目した見直しの検討が始まるようです。記事にあるように、スタートアップが事業を拡大しやすくする環境づくりを、是非、進めて頂くことに期待しましょう。

(メルマガ「IPビジネスだより 2024年8月号」から転載)