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企業の知財活動「きのこの山」

今月、株式会社 明治から「知的財産権によってブランドを守る取り組み きのこの山に関する模倣品対策のご紹介」といったプレスリリースがなされました。
(出典:株式会社 明治 Webサイト 2024.9.24

プレスリリースには、「株式会社 明治(代表取締役社長 松田 克也)は、知的財産は経営資源として重要であり、知的財産活動が事業運営を支え、中長期的な企業価値向上に貢献すると考えています。代表的な知的財産としては、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などが挙げられますが、今回は『きのこの山』を商標権で保護する知的財産活動をお知らせします。」と、あります。

先の任天堂でも述べましたが、最近では、知的財産が経営資源であることを明言して、しかるべき手段で保護することを発信することが増えてきました。

さて、先の任天堂では特許戦略でしたが、明治では商標戦略です。明治は、「きのこの山」の商標によって自社の経営資源を守った事例を2つ紹介しています。

まず、ポイントは立体商標です。実際に明治が行使した商標権(登録6031305号)は次のリンクから確認することができます。

いかがでしょう。まさに「きのこの山」そのものです。立体商標は一般の商標と異なり立体形状をそのまま商標として登録しますが、そのハードルは高く、その形を見れば誰もが「あぁ、『きのこの山』ね」と思うレベルが求められます。これが強力な権利を生みます。プレスリリースの事例2は、この商標権を主張したものでしょう。

ところで、上記の商標登録情報を見ていくと「チョコレート菓子」と書いてあるのに気づきませんか?つまり、この商標権(登録6031305号)は「チョコレート菓子」に認められている権利ということです。

勘の良い方は、プレスリリースの事例1は「ワイヤレスイヤホン」なので権利行使できないのでは?と思ったかもしれません。

事例1は、よく読むと「イヤホンケースに『meiji』『きのこの山』を記載した模倣品」とあります。つまり、ワイヤレスイヤホンそのものの形が「きのこの山」に似ていることではなく、そのケースに記載されている「meiji」や「きのこの山」の文字が商標権侵害と主張したということです。

例えば、次のリンクを見てみましょう。明治が文字商標「きのこの山」についてあらゆる商品で商標権を持っていることが分かります。

流通やインターネットの発展で市場が世界規模になっている現代、任天堂や明治のように知的財産権を多方面から活用することで自社の知的資産を守る活動が益々活発になっていくことでしょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2024年9月号」から転載)