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企業の知財活動「ポケモン」

9月25日、ゲーム業界を賑わしているニュースがゲーム「パルワールド」のリリースです。今月開催の東京ゲームショウ2024でも会場を賑わしたとか。

一方で、リリースを控えた9月20日に任天堂株式会社と株式会社ポケモンが「パルワールド」を提供する株式会社ポケットペアを特許権侵害で訴えました。
(出典:ファミ通.com 2024.9.19

「ポケモン」と「パルワールド」は、ゲームの世界観やキャラクターなどが似ていると言えば似ているかもしれません。しかし、ゲームキャラクターはどうしても似てしまうといった側面もあります。判断が非常に難しいところです。

このあたりの難しさは任天堂もよく分かっているのでしょう。今回は、著作権侵害ではなく、特許侵害で訴えてきました。訴状が公開されていないのではっきりしませんが、モンスターを捕獲するシステムの特許権を主張しているのではないかとの見解が有力です。

ところで、任天堂です。この会社は知財活動に非常に力を入れていることで有名です。これは、ゲームソフトという目に見えないコンテンツを商材としていることもあるからでしょう。

例えば、特許は国内だけでも3,000件以上保有して、強力な特許網を築いています。事実、知財訴訟では任天堂は連戦連勝で、ほぼ負けなしの実績を持っています。有名な事件だけでも、ドンキーコング事件(米国ユニバーサルから映画「キングコング」の権利を侵害していると訴えられた裁判)、マリカー事件(マリオのコスチュームで公道をカートで走るサービスを提供していた会社を提訴)、コロプラ事件(ゲームアプリ「白猫プロジェクト」を提供していたコロプラを特許権侵害で提訴)など枚挙に暇がなく、いずれも任天堂が勝利をおさめています。

もちろん知財人材の育成にも力を入れています。知的財産人材の採用ページを立ち上げているほどです。このページを見るといかに知財に力を入れているか理解できるでしょう。

任天堂の知財戦略には暗黙のポリシーがあるようです。過去を振り返ると、事前の交渉は必ず行っています。それを無下にされるなど任天堂にとって理不尽な対応の場合、強力な知的財産権網を活用して圧倒するモードに切り替えているように見受けられます。

近年、任天堂のように自社の知的財産を経営資源として守ることを大切にしている企業が増えてきました。次の記事では、商標を活用した知財活動の例をご紹介しましょう。

 

(メルマガ「IPビジネスだより 2024年9月号」から転載)