2024年11月11日~22日、意匠法条約を確定し採択するための外交会議が、サウジアラビア・リヤドで開催されました。この会議で「リヤド意匠法条約」が採択されました。(出典:特許庁 2024.12.13)
工業デザインを保護する権利(意匠権)を取得するための手続きは、国によって異なっています。この条約は、加盟各国間でできるだけ同じ手続きにすることで、ユーザーフレンドリーな制度を目指すものです。
この条約が注目されるのには訳があります。この条約によって、知財業界の長年の悲願が達成されるかもしれないからです。
知的財産権のうち、特許庁に出願して審査を経て権利が認められるものには、特許権、商標権、意匠権があります。それぞれ、発明、トレードマーク、工業デザインを保護します。
特許権、商標権、意匠権は、いずれも国ごとに与えられる権利ですので、その手続きも国ごとでまちまちです。しかし、世界が一つの市場となっている現在において、国ごとで手続きが違うというのはコストがかかります。各国で全く同じとはいかないまでも、互いに歩み寄ってできるだけ同じ手続きにできないかというのは長年の課題でした。最も古くに締結された「工業所有権の保護に関するパリ条約」の原案が作成されたのが1883年ですから、いかに長きにわたって先人達が取り組んできたかうかがい知れます。
このような取り組みの中で、特許については2000年に「特許法条約」が、商標については2006年に「商標法に関するシンガポール条約」が採択されました。しかし、意匠については、なかなか各国の足並みがそろわず、今年、やっと一定の合意ができたというわけです。
「リヤド意匠法条約」では、議論の末、出願日から少なくとも6カ月は意匠を非公開にできる制度や、一定期間内であればすでに公開したデザインを登録できる制度など、デザイン保護を求める側にとって優しい取決めが盛り込ました。
これで、特許権、商標権、意匠権の3つの権利についてルールが出そろうことになります。条約の発効までにはもう少し時間がかかりますが、新しい条約が、世界でのデザイン保護に一役買うことを今から期待します。
(メルマガ「IPビジネスだより 2024年12月号」から転載)