住友ゴム工業がグッドイヤーから商標「DUNLOP(ダンロップ)」を買い戻したと発表しました。欧州・北米・オセアニア地域での四輪タイヤの商標権とのことですが、その額、5億2600万ドル(約826億円)です。
(出典:住友ゴム工業 2025.1.4)
住友ゴム工業は、もともと英国のダンロップ社の日本法人としてスタートしたとのことで、商標「DUNLOP(ダンロップ)」についても、かつては住友ゴム工業が商標権を持っていました。
1980年代の日本経済が元気だった頃、欧米のダンロップ社の現地法人を買収して世界展開を目指したようです。その最中、1995年に阪神淡路大震災で神戸市の本社や工場が被災したことで財務基盤が弱体化し、商標「DUNLOP(ダンロップ)」の商標権をグッドイヤー社に譲渡することで得た資金で再建をすすめました。
その後、住友ゴム工業は、欧州・北米・オセアニア地域では商標「FALKEN(ファルケン)」をブランド展開してきたようですが、商標「DUNLOP(ダンロップ)」には遠く及ばなかったようです。
そして、震災から30年の節目である今年、住友ゴム工業は、あらためてグローバル展開に踏み出すことを決定し、商標「DUNLOP(ダンロップ)」の買戻しは、その象徴となりました。
商標「DUNLOP(ダンロップ)」には、欧州・北米・オセアニア地域でのマーケティングの見地から5億2600万ドル(約826億円)と評価されたわけですが、これには単に市場経済からの価値以外にも、住友ゴム工業が、今、もう一度、世界展開に挑む旗印としての意義もきっと含まれていることでしょう。
企業の向かう道筋を照らすシンボルとなる商標の力を感じさせる事例でしょう。
(メルマガ「IPビジネスだより 2025年1月号」から転載)